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防ごう目のトラブル!!コンタクトレンズの眼合併症

日本コンタクトレンズ学会理事長 東邦大学医学部眼科学教授 堀 裕一

 現在、全国で1400万人のコンタクトレンズ装用者がいると言われています。ほとんどの方が問題なく装用しておられますが、中には目がすぐ赤くなったり(充血)、ゴロゴロしたり(異物感)、目が乾いたり(乾燥感)して、コンタクトレンズ装用を続けることができない方が存在します。その中には、もともと目にドライアイやアレルギーがあり、コンタクトレンズ装用に向いていない方もおられますし、コンタクトレンズの間違った使用法でトラブルを起こしてしまう人も存在します。
 コンタクトレンズと眼の合併症について正しい知識をつけておくことで、コンタクトレンズ装用にかかわるトラブルを無くすように心がけましょう。

日本コンタクトレンズ学会理事長
東邦大学医学部眼科学教授 堀 裕一

 屈折異常(近視、遠視、乱視)を矯正する手段として、メガネとコンタクトレンズがあります。コンタクトレンズは、メガネと違い、レンズ面を角膜に直接接着させて光の屈折を変化させて、視力を改善します。

【利点】

 コンタクトレンズの利点として、メガネを装用しないことによる整容的な面や、スポーツ選手などでのケガからのリスク回避の面があります。さらにメガネ装用時に生じる、像の拡大や縮小、プリズム作用による像のゆがみがないことも良い点です。

【リスク】

 しかしながら、コンタクトレンズが直接角膜に接着することは、角膜に傷をつける可能性があり、それがコンタクトレンズの大きな欠点(リスク)となります。

角膜は傷つきやすい

 角膜は目の表面にある厚さ 0.5 ミリの透明な膜 で、一番外側には角膜上皮細胞かくまくじょうひさいぼうが存在します。
 角膜上皮細胞は、目の表面の涙(涙液るいえき)で乾燥と 刺激から守られています。コンタクトレンズを装用 すると、コンタクトレンズ自身が、角膜上皮細胞を 直接傷つける可能性があります。また、コンタクト レンズ装用により、涙液が減って乾燥することで、 角膜上皮細胞が傷んでしまうこともあります。
 さらには、傷ついた角膜から病原体が目の中に入 り、感染症を起こすリスクもあります。

コンタクトレンズにはリスクがあることを
知っておく必要があります。

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 目の表面にある角膜は、非常に薄い涙の層(涙液層るいえきそう)でその表面を覆われており、乾燥や刺激から守られています。角膜は血管がない透明な組織ですので、角膜上皮細胞の栄養や酸素は血管からではなく、涙液層からもらいます。ですので、涙(涙液)は角膜にとってとても重要です。

【ドライアイとは】

 涙が目の表面で少なくなって、乾燥感などの症状が出ることを「ドライアイ」といいます。ドライアイは日本に1200万人以上いると言われています。症状としては、「目が乾く」「目がごろごろする」「目が疲れる」などがあり、子供から大人まで幅広い層に起こります。一般的に、男性より女性の方がドライアイになりやすいと言われています。

【コンタクトレンズの影響】

 コンタクトレンズを装用すると、角膜上のコンタクトレンズが涙液層に影響を及ぼします。具体的には、涙の量が減ったり、涙が蒸発して乾きやすくなったりします。

対策

 もともとドライアイのない方でも、コンタクトレンズをつけるとドライアイ症状が出る方がおられます。そのような方は基本的にはメガネ装用を行い、コンタクトレンズを装用する際は、しっかりとドライアイ対策をする必要があります。
 具体的な対策として、乾きにくい材質のコンタクトレンズやワンデー(1day)タイプのコンタクトレンズに変更したり、ドライアイ用の目薬をさしたりすることが挙げられます。ただ、そのような場合も、コンタクトレンズ装用はできるだけ短時間にする方が良いです。

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 基本的には、目薬はコンタクトレンズを外した状態でさすべきものです。
 とはいえ、コンタクトレンズ装用者の中には、装用すると目が乾くため、コンタクトレンズの上から目薬をさしたい方がいるかと思います。しかし、コンタクトレンズの上からの目薬については注意が必要です。

【注意点】
 コンタクトレンズの上から目薬をさす場合は、防 腐剤が入っていない目薬(一度で使い切りの目薬) や、塩化ベンザルコニウム※ 以外の防腐剤が入っ ている目薬を使用してください。
 また、点眼の成分がコンタクトレンズに吸着して レンズの形や性質がかわってしまう可能性もありま すので、コンタクトレンズはこまめに新しいものと 替える(できたら 1 day タイプ)のが良いでしょう。
 一方、ハードコンタクトレンズをお使いの方に関 しては、基本的にコンタクトレンズの上から目薬をさしても大丈夫です。

【目薬で治療中の場合は】
 ただ、これらの目薬は、コンタクトレンズ装用によるドライアイに対する場合です。眼科で目の病気に対して目薬で治療中の方は、そもそもコンタクトレンズの装用自体を避けてください。コンタクトレンズ装用の再開に関しては、担当の先生に相談してください。
 また、緑内障などで、長期の点眼治療が必要なコンタクトレンズ装用者もおられると思います。そのような方も、やはりコンタクトレンズを外した状態で目薬をさすのが良いです。緑内障点眼は、日中さすことはあまりないと思いますので、朝コンタクトをつける前や、夜コンタクトレンズを外した後に、目薬をさすのが良いと思います。

※ 目薬には様々な成分が含まれており、中にはコンタクトレンズに吸着して、目に悪い影響を与えるものがあります。特に目薬中の防腐剤「塩化ベンザルコニウム(BAK)」は、コンタクトレズに吸着して角膜に影響を与える可能性があり、注意が必要です。これらの目薬には、「ソフトコンタクトレンズを使用したまま点眼しないこと」と注意書きがでています。

 花粉症によって、目のかゆみや充血を引き起こす病気を「アレルギー性結膜炎」といいます。アレルギー性結膜炎は、スギやヒノキなどの花粉だけでなく、ダニやハウスダストなどでも起こり、これらはアレルゲンと呼ばれます。このアレルゲンが結膜を刺激し、体の免疫反応が過剰になり、充血やかゆみ、涙、目やにを引き起こします。

【コンタクトレンズの悪影響】
 コンタクトレンズは、目に直接接触しているので、レンズでの摩擦や異物感がアレルギー反応をさらに刺激して、アレルギー症状を悪化させる可能性があります。また、コンタクトレンズ自体にアレルゲンが吸着することで、症状の長期化につながる可能性も考えられます。そのため、基本的にアレルギー性結膜炎が起こっている間は、コンタクトレンズの装用は中止すべきです。

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【花粉症の方へ】
 毎年、花粉症の時期に、アレルギー性結膜炎を発症するコンタクトレンズ装用者は、花粉飛散時期はコンタクトレンズからメガネ装用に替えるようにしましょう。
 また症状がある方は、眼科で目の状態を診てもらい、担当医と相談しながら、アレルギーに対する治療(目薬や内服薬)を取り入れていくことが重要です。
 最近、アレルギー性結膜炎の治療では、花粉が飛散する前から抗アレルギー点眼薬を開始して、花粉飛散時期の目の症状をできるだけ抑えるようにする「プロアクティブ点眼療法」が、新しい治療として注目されています。
 花粉飛散時期の目の症状を最小限にして、早くコンタクトレンズ装用を再開できるように、しっかりと治療を行うことが重要です。

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 コンタクトレンズ装用中や、朝、コンタクトレンズをつけてすぐに、目が赤くなったり(充血)、目が痛くなったり(眼痛)、涙がとまらなくなったり(流涙りゅうるい)、目やに(眼脂がんし)がたくさん出たりした場合は、すぐにコンタクトレンズを外してください。これらには様々な原因が考えられます。

【異物】
 目の中にゴミや砂、異物が入っている場合があります。抜けた自分のまつ毛が目に入った場合にも、同様のことが起こります。人間のまばたきや涙にはこれらを洗い流す力があります。コンタクトレンズを外して、何度かまばたきをしてみてください。場合によっては、自分の涙でゴミが洗い流されることもあります。

【コンタクトレンズの破損】
 外したコンタクトレンズの周りが破れていないか、一部欠けていないか、汚れが付いていないかをチェックしてください。破損したコンタクトレンズによって、角膜や結膜が傷ついている場合があります。特に一部が欠けている場合は、破片が目の中に残っている場合がありますので、注意が必要です。必ず眼科で診察を受けてください。

【化粧品・保存液による影響】
 化粧品が、コンタクトレンズの汚れの原因になることがあります。お化粧終了後の手や指は汚れていますので、お化粧後にコンタクトレンズをつけるのではなく、先にコンタクトレンズをつけてからお化粧をしましょう。ただし、マスカラやアイラインを塗るときには、間違ってコンタクトレンズに触れないように注意してください。
 また、コンタクトレンズの保存液が、目に影響を及ぼすことがあります。特に、後で中和するタイプの保存液の場合は、十分に中和しないままコンタクトレンズをつけると痛みが出ます。保存液の内容をしっかりとチェックして、正しい保存方法を心掛けてください。

【感染症】
 コンタクトレンズの合併症でもっとも怖いのが、角膜感染症です。重症例では失明の危険性もあります。多くはコンタクトレンズの管理が不十分だったり、無理な使い方をしたりしている場合に起こりますが、問題なく使っていても感染症が起こる場合があります。
 コンタクトレンズを外しても痛みが続く場合や、見え方に影響が出ている場合は、すぐに眼科を受診してください。

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 コンタクトレンズ装用は、微生物による角膜の感染症のリスクが常にあります。
 大きなリスクとしては、1)コンタクトレンズをつけるときに、汚染された手指を介して微生物が目に入る場合、2)保存ケース内が微生物に汚染されて、コンタクトレンズに付着した微生物が目に入る場合、の大きく二つが考えられます。

【角膜感染症の症状と原因】
 角膜感染症では、目の違和感、痛み、充血、目やに、涙などの症状の他に、視力低下が起こります。視力低下は、感染症の炎症によって角膜が濁ってしまい、透明性が低下するために起こります。重症の角膜感染症では、治療を行って微生物をやっつけた後でも、角膜が濁ったまま残ってしまうこともあります。
 重症の角膜感染症の原因となる微生物には、アカントアメーバと緑膿菌りょくのうきんが挙げられます。どちらも水道水などを介して、レンズケース内で微生物が増殖し、それが目に入って感染症を起こします。急激な目の痛みと視力低下を自覚します。どちらも適切な治療薬で迅速な対応が必要です。また、治療も長期になることが多いです。
 誤ったレンズ装用(指定期間を超えて装用する、レンズケアを怠っている、手指をきれいに洗わない)が原因になることが多く、日ごろから正しいレンズケアやレンズ装用を心掛けてください。

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 これまで様々なコンタクトレンズにかかわる眼の合併症をご紹介しました。最後にコンタクトレンズの正しい使い方をおさらいしたいと思います。

①コンタクトレンズを扱う前に手指をきちんと洗おう。
汚れた手指でコンタクトレンズを扱うと、油やタンパクがコンタクトレンズに付着したり、微生物に汚染したりする可能性があります。装用前に、手指を石鹸できっちりと洗ってください。

②お化粧の前にコンタクトレンズをつけましょう。
前に述べたように、お化粧は手指が汚れます。先にコンタクトレンズをつけてからお化粧をしてください。

③レンズはこすり洗いをしよう。
 2週間や1か月で交換するタイプのコンタクトレンズの場合、保存液につけておくだけでは、付着した汚れを落としきることはできません。手のひらにコンタクトレンズを載せて、指のはらで同じ方向に前後に約10秒間、洗浄液でこすり洗いをしてください。

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④レンズケースはこまめに替えよう。
 角膜感染症では、レンズケースの汚染が大変問題になっています。ソフトコンタクトレンズの場合、レンズケースは3か月を目途に新しいものと交換してください。

⑤装用時間を守ろう。
 極端に長時間のコンタクトレンズ装用や、レンズをつけたまま寝てしまうことは、大きなリスクとなります。正しい装用時間で装用してください。

⑥処方と定期検査は眼科専門医で。
 コンタクトレンズの眼合併症を起こさないようにするためには、眼科での診察が重要です。症状が出たときだけ受診するのではなく、日頃から定期的に眼科で目を診てもらうことが重要です。

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