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コンタクトレンズと目のお化粧—健康で美しい目を守るには—

医療法人博寿会山本病院眼科 近畿大学医学部眼科学講座非常勤講師 月山 純子

目元を強調した、いわゆる"目力"メイクが流行しています。ぱっちりとした目元には、誰もが憧れると思いますが、実は化粧品やコンタクトレンズによる目のトラブルが後を絶ちません。目元は非常にデリケートな部分です。また、コンタクトレンズは高度管理医療機器といって、使い方を誤ると、大きな健康被害を起こす可能性がある医療機器に分類されています。

最近は使い捨てのコンタクトレンズが多くなっており、手軽なものと考えていませんか?アクセサリー感覚でコンタクトレンズを扱ったり、本来清潔にしなくてはいけない、目の大切な部分にお化粧をしていませんか?

健康な目があってこそ、本当の目力が発揮できます。キレイな目を保つために、目を大切にしてください。

屈折異常の人が、ものをはっきり見るために、メガネやコンタクトレンズは必需品です。特に若い女性では、コンタクトレンズを使用する人が多く、いまや日本でのコンタクトレンズユーザーは1500万人から1800万人といわれています。

コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズに分かれます。ハードコンタクトレンズは角膜の直径より小さく、水を含みません。ソフトコンタクトレンズは角膜の直径より大きく、水を含んでいます。

ハードコンタクトレンズでは、1~3 年使用するタイプが多いですが、ソフトコンタクトレンズでは、以下のように使用期間によりさまざまなタイプがあります。

◎使用したら1日で捨てる
1日使い捨てタイプ
◎最長2週間使用したら交換する
頻回交換タイプ
◎最長1~3ヵ月のサイクルで定期的に交換する
定期交換タイプ
◎1週間または1ヵ月間レンズを外さずに使用する
連続装用タイプ
◎約1年間使用するタイプ
従来型タイプ

●ハードコンタクトレンズ

長所:
ソフトコンタクトレンズよりも視力矯正効果が高い。
角膜にキズがあると、痛くて装用できないので異常を早く発見できる。
短所:
ソフトコンタクトレンズに比べて初期装用感が良くないため、慣れるのに時間がかかる。
ズレやすい。

●ソフトコンタクトレンズ

長所:
柔らかいので装用感が良く、慣れるのに時間がかからない。
短所:
ハードコンタクトレンズほどの視力矯正効果が得られない。
レンズが水を含んでいるため、汚れたり微生物が繁殖しやすく、毎日の消毒と洗浄に注意が必要。
角膜にキズができても、ソフトコンタクトレンズを付けると、絆創膏のようにキズを覆い隠すので、痛みが和らいでしまい、異常の発見が遅れ重症化しやすい

角膜は透明で血管がないので、主に涙によって必要な酸素を取り入れ、老廃物を排出しています。コンタクトレンズは角膜を覆いますから、このメカニズムに負担がかかります。現在発売されているほとんどのコンタクトレンズは酸素を通しますが、その程度はさまざまです。角膜に酸素が届くには主に 2 つのルートがあって、コンタクトレンズを通った酸素が角膜に届くルートの他に、レンズ下の涙の交換によって届くルートがあります。しかし、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズでは、レンズ下の涙液交換のしくみが異なります。

ハードコンタクトレンズは固いので、涙の上に浮かび、まばたきのたびに、レンズと角膜の隙間の涙が交換され、酸素が供給されます。ソフトコンタクトレンズでは、柔らかく、角膜にすっぽりかぶせて装用するので、レンズ下の涙液交換は、ハードコンタクトレンズよりも少なくなります。

角膜が酸素不足にならないよう、装用時間が長くならないようにしましょう。意識して深いまばたきをするようにし、回数も多くしましょう。涙の中には、抗菌作用のある物質が含まれていて、角膜を守る働きをしています。涙が正常に分泌されているかどうかは、コンタクトレンズを安全に使用する際の大事なチェックポイントです。

涙の量が少なくなったり、働きが悪くなったりして起こるトラブルをドライアイといい、目が乾いたり、ゴロゴロしたり、痛くなったり、充血したり、まばたきが増えたりなどの症状がでます。

ところで、図1のように上下の睫毛の内側には、『マイボーム腺』という、目を乾燥から守るために大切な脂質がでる分泌腺があり、その出口が上まぶたに約25個、下まぶたに約 20 個あります。マイボーム腺からでる脂質は、目の表面の涙が乾かないように、重要な役割を果たしていて、いわば天然の美容液です。

最近流行のアイメイク法はまつ毛の内側にアイシャドウやアイラインを入れるので、このマイボーム腺の出口がメイクで塞がれ、涙が蒸発しやすくなり、ドライアイを起こすといわれます。メイクはまつ毛の外側にするようにして、マスカラもまつ毛の根元には塗らないように注意しましょう。

図1

脂質成分を分泌し涙が蒸発するのを防ぐマイボーム腺の出口を、メイクで塞いでしまうと目が乾きやすくなってしまう

ドライアイになると、目の表面の角膜や結膜にキズができやすくなります。そして目にキズができると、細菌や真菌、アメーバといった微生物に感染しやすくなってしまいます。

コンタクトレンズを装用する人はドライアイになりやすいうえに、レンズそのものが微生物に汚染されやすいという、二重の悪条件にさらされています。そのために、コンタクトレンズ装用に伴う角膜の病気が後を絶ちません。角膜の病気は重症化すると失明の恐れさえあります。目の調子が悪いと感じたら、すぐにコンタクトレンズをはずして、眼科を受診しましょう。

また、マスカラの繊維や、アイシャドウのラメやパールが目に入った経験はないでしょうか? これらは異物となって、こすれて目にキズをつけてしまうことがあります。でも、この上にソフトコンタクトレンズをしていると痛みが和らいでしまって気がつかないこともあります。目がゴロゴロするのは、ドライアイのせいだからと思ってそのままにしていたら、異物が原因で感染を起こしたというケースも多いのです。せっかくキレイになるために、お化粧をしていても、目の病気の原因になっては、台無しではないでしょうか。

化粧品がコンタクトレンズの汚れの原因になるって本当 ?

「コンタクトレンズがよく曇る」「いくら一生懸命コンタクトレンズを洗っても、すぐに汚れてしまう」ということはありませんか? コンタクトレンズの汚れの原因には、涙の中に含まれる脂質やタンパク質など、自分自身の体から分泌されるものによる汚れや、外から入って来る花粉や鉄粉など、さまざまなものがありますが、実は化粧品も汚れの原因となるのです。

最近、コンタクトレンズが汚れやすいという方は、以下の質問に答えて下さい。1つでもyes があれば、化粧品がコンタクトレンズの汚れの原因になっている可能性があります。

  1. コンタクトレンズに触る前、石けんを使って、よく手を洗っていない。
  2. お化粧が終わってからコンタクトレンズを付けている。
  3. まつ毛の内側にアイラインやアイシャドウを塗っている。
  4. まつ毛の根元まできっちりとマスカラを塗っている。
  5. コンタクトレンズを付けたまま、クレンジングをしている。

お化粧とコンタクトレンズ、どっちを先にするのがいいの ?

皆さんは、お化粧の時に、どんなアイテムを使用していますか? 朝、洗顔をしてから、基礎化粧品、日焼け止めや化粧下地に始まって、メイクアップまで多くの工程があります。また、化粧品もブラシなどを使って付けるアイシャドウやチークのような化粧品もありますが、日焼け止めクリームやリキッドファンデーションなど、直接手に取って、顔に塗る化粧品もありますね。

お化粧終了後の手は汚れています。化粧品の多くは、油分が多く含まれていますから、石けんでしっかり洗わないと、なかなか汚れが落ちにくいのです。化粧終了後の汚れた手でコンタクトレンズに触れると、レンズを汚してしまいます。

ですから、コンタクトレンズを先に付けてから、お化粧をする方が良いといえます。ただし、マスカラやアイラインを塗る時に、誤ってコンタクトレンズに化粧品を付けてしまわないようにして下さい。

コンタクトレンズを付けてからお化粧を
(コンタクトレンズファースト その1)

コンタクトレンズをしたままクレンジング。 これって大丈夫 ?

「コンタクトレンズを付けたままのクレンジング」これは、けっこうしている方が多いのではないでしょうか。コンタクトレンズをしていないと、お化粧がちゃんと落とせているかどうかわからない、という方や、旅行に行った時や、温泉に行った時など、さまざまな場面でコンタクトレンズをしたまま、お化粧落としをすることがあると思います。そうすると、お化粧落としの際にクレンジング剤が目に入ることがあり、レンズを汚してしまう可能性があります。また、一部のソフトコンタクトレンズでは、クレンジングオイルによってレンズが変形することも報告されています。

基本的にはコンタクトレンズをはずしてから、お化粧落としをするようにしてください。旅行などで、どうしてもコンタクトレンズをしたまま化粧落としをせざるを得ない時は、クレンジング剤をコットンや綿棒に含ませて、目に入らない様に丁寧に化粧落としをしてください。(方法は「目の化粧落としの方法」を参考にしてください)

コンタクトレンズをはずしてからクレンジングを
(コンタクトレンズファースト その2)

コンタクトレンズが化粧品で汚れたらどうしたらいい ?

高い値段のコンタクトレンズ、化粧品で汚れてしまったけど、洗えば大丈夫!?そう思っていませんか ?確かに、クリーナーで、しっかりと、こすり洗いをすれば落ちるものもあります。でも、ものによっては、化粧品の油分とコンタクトレンズの素材が反応して、落ちなくなることもあります。汚れたコンタクトレンズをそのままにしておくと、付け心地が悪くなったり、見えにくくなったりしますし、汚れが原因になって、眼にキズをつけたり、アレルギーを起こしたり、感染症を引き起こしてしまうこともあります。

コンタクトレンズがお化粧品で汚れてしまったら、専用のレンズクリーナーでしっかりこすり洗いをして、それで落ちなければ、捨ててください。もったいないからといって、汚れたレンズをそのまま使用して病気になる方が、もっともったいないですよ。

図2 マイボーム腺の出口を塗りつぶすメイク


こんな、メイクをしてしまっていませんか?

健康な目で本当の目力アップ。正しいコンタクトレンズのケアを

1日使い捨てや連続装用のソフトコンタクトレンズ以外は、毎日きちんとレンズケアが必要です。

皆さんは、毎晩、クレンジング、洗顔をして、その日の汚れをその日のうちに、落としていますよね。コンタクトレンズだって同じです。その日の汚れは、その日のうちに、きちんと落として明日に備えましょう。お肌のケアに時間をかけても、コンタクトレンズのケアをさぼると、目力がしぼんでしまいますよ。

ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズでは、ケアの仕方が異なります。自分のレンズが、どのようなタイプで、どんなケアが必要か、眼科の先生とよく相談しましょう。

ハードの人もソフトの人もレンズケアの基本を守ってください

目にクレンジング剤が入らないようにするにはどうしたらいい ?

目にクレンジング剤が入って、目がしみる。こんな経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか? 最近は、しみないクレンジング剤も登場してきていますが、目はとってもデリケートですから、異物が入ることは避けたいものです。

目にクレンジング剤が入らないようにするには、コットンや綿棒を使って丁寧に落とす方法がおすすめです。きちんとクレンジングをしないと、肌の健康にもよくありません。

アイメイクしっかり派はメイク落としに気をつけましょう

1
コットンを二つに折って、下まぶたに置きます。
2
別のコットンに、ポイントメイクアップリムーバーを、500円玉大に染み込ませ、上まぶたのメイクになじませて、下のまぶたに置いたコットンに、汚れを移していきます。
3
落ちにくいマスカラやアイライナーは、リムーバーを綿棒に染み込ませ、丁寧に落としましょう。
4
下のコットンは、目尻から目頭へ汚れを拭き取ります。

CIBA Vision配布資料より

  • レンズを扱う前は必ず石けんで、しっかり手を洗いましょう。
  • レンズのこすり洗いは、表も裏も20回から30回行いましょう。
  • レンズのこすり洗いが終わったら、必ず、すすぎを行いましょう。ソフトコンタクトレンズでは、水道水は使用できません。また、すすぎはレンズを目に入れる前にも行いましょう。
  • レンズケースは毎日洗浄して、しっかり乾燥させましょう。レンズケースは3ヵ月以内に新しいものに交換しましょう。コンタクトレンズだけでなく、レンズケースのケアも必要です。

カラーコンタクトレンズが流行していますが、眼障害もたくさん起こっています。どうしてでしょうか ? カラーコンタクトレンズは、度数が入っていないレンズであっても、2011 年 2 月 4 日から、厚生労働省の承認を受けた商品しか販売できなくなりました。しかしインターネットなどを通して海外からの並行輸入というかたちで、承認を受けていないカラーコンタクトレンズを手に入れることも可能なようです。でも承認を受けていないということは、目に入れても大丈夫な製品かどうかわからないということです。また、承認を受けたレンズであっても、レンズを使用するには必ず眼科専門医の診察が必要です。目の状態や形は人によって違いますから、自分の目に合ったレンズを選ばなくてはいけません。これは、診察を受けないと絶対にわからないものなのです。

カラーコンタクトレンズで眼障害が起こった患者さんの話を聴くと、インターネットや雑貨店で購入したため、診察を全く受けておらず、自分の目に合っていないコンタクトレンズで目に傷がついたり、アレルギーを起こしたというケースや、使い方や消毒方法が間違っていたために感染症を起こしてしまったというケースが非常に多いのです。

カラーコンタクトレンズは、アクセサリーではありません。目という非常にデリケートなところに付けるものです。使い方を誤ると、角膜潰瘍といった失明につながるような重大な病気を引き起こすこともあるのです。カラーコンタクトレンズを装用したい場合には、厚生労働省の承認を受けたレンズを、眼科専門医の診察を受けた上で処方してもらいましょう。また、定期的な受診も忘れずに。目の状態は常に変化しています。一回診てもらったから後は大丈夫というわけではありません。

コンタクトレンズ(カラーコンタクトレンズも同じ)を装用したい場合は、必ず眼科を受診しましょう。まず、コンタクトレンズを付けても大丈夫な状態かどうかの診察が必要です。涙や結膜の状態、角膜に異常がないかどうかなどは、重要なポイントです。

また、目の形は、一人ひとり違うので、レンズの種類選びが大切です。ベースカーブといって、コンタクトレンズのカーブが自分の目の形と合ったものを選ばないといけません。合わないレンズを付けていると、重大な目の病気を引き起こしてしまいます。

必ず眼科専門医にコンタクトレンズを付けた状態を確認してもらい、目の状態に合ったレンズを選んでもらいましょう。

そして、レンズの取り扱い方法や、レンズケアの方法の指導を受けたら、3ヵ月に一度は必ず定期検査を受けましょう。

調子がいいからと放っておくと、怖い病気が隠れているのに発見が遅れ、失明などのとりかえしのつかない結果を招くこともあります。

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絵 清水 理江

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