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子どものコンタクトレンズQ&A
日本眼科医会常任理事 宇津見眼科医院院長 宇津見 義一
コンタクトレンズ(以下CL)は視力を補正する便利なツールです。現在、CLを使用する人は1500~1800万人といわれています。平成18年ではCLの使用率は小学生が0.1%、中学生が5.9%、高校生が25.2%と年齢とともに増えています。特に中高生は年々その使用者が増えています。メガネだとカッコ悪いからCLにしたいし、スポーツに便利ですからね。
しかし、CLは異物ですので目にトラブルを生じることがあります。日本眼科医会の調査ではCL使用者の6.5人~10人に1人にCLによる眼障害が生じています。
子どもの目の健康を守るために、CLはルールを守って正しく使用しましょう。
CLとメガネで最も異なることは「安全性」です。メガネでは目に傷がついたりはしませんが、CLは目の上にのせるので、障害が起きる可能性があります。
一方、CLは光学的に優れています。メガネは遠視ではモノが大きく見え、近視では小さく見えますが、CLはそれが少ないのです。また、視野も広く、眼球とともに動くので、ピントのズレもなく、適切に見えます。
左右の目の度数が違う場合、メガネでは目の底に写る像の大きさが異なります。けれどCLでは、その大きさの変化が少ないので適切に見えます。そのためにCLは弱視の治療にも使います。
コンタクトレンズとメガネの違い
子どもさんがCLを希望する理由として、スポーツに便利、メガネは嫌いなどがありますが、その場合、CLが必要ということはありません。ただし、眼科専門医のすすめによる医学的使用では、治療上、CLが必要となります。
スポーツで使用したいなら、ハードCLはズレたりするので、ソフトCLが向いています。特にサッカー、柔道などではメガネが使えません。
CLが必要な子どもの目の病気
不同視といって左右の度数の差が大きい場合や、白内障手術後でとても強い遠視になった場合にはCLが必要です。また、角膜外傷や円錐角膜などの不正乱視には、ハードCLが有用です。
CLには、角膜より小さく水を含まないハードCLと、角膜より大きく水を含むソフトCLがあります。
ハードCL
異物感があり、ズレやすいなどの欠点はありますが、角膜に傷ができると痛くて装用できないために病気を早期に自覚します。そのため眼障害が重症化しにくので安全性が高く、乱視の矯正もソフトCLより光学的に有利です。
ソフトCL
柔らかいので装用感がよく、ズレにくいためにスポーツをするときにも使用できます。しかし、角膜に傷ができてもバンデージ効果といって傷を覆い隠すので、軽度の傷では自覚症状が少ないために重傷化する場合が少なくありません。
ハードCLは2~3年使用するタイプがほとんどです。
特殊なものに、オルソケラトロジーレンズといって、夜寝るときに使用して起きているときは外す、近視を矯正するタイプがあります。日本コンタクトレンズ学会はガイドラインで、その使用を20歳以上としています。
ソフトCLには次のような種類があります。
- 約1年間使用する従来型タイプ
- 毎日使用したら捨てる1日使い捨てタイプ
- 2週間使用して交換する2週間交換タイプ
- 1~6ヵ月のサイクルで定期的に交換する定期交換タイプ
- 1週間または1ヵ月CLをはずさずに使用する連続装用タイプ
この中で、1日使い捨てと連続装用タイプ以外は、洗浄・消毒を毎日する必要があります。
目の一番外側の角膜は、血管がないので、涙を介して空気中の酸素を取り入れて呼吸しています。CLは酸素を透しますが、角膜の上にのせるので、使用しているうちに、どうしても酸素不足になります。角膜は、酸素不足になると傷や細菌が付きやすくなり、そのため眼障害が起こりやすくなります。
CLの種類によって異なる角膜の酸素濃度
- 従来型のソフトCL:
- 酸素透過性が低く、角膜の酸素濃度はエベレスト山頂と同程度。
- 酸素透過性がよい、1日使い捨てタイプや2週間交換タイプのソフトCL。ハードCL:
- 富士山頂と同程度。
- 就寝時も装用する連続装用タイプ:
- 従来型よりさらに酸素濃度が低下。
眼科専門用語で難しいですが、CL眼障害には点状表層角膜症、アレルギー性結膜炎、角膜潰瘍(写真1)・角膜浸潤、巨大乳頭結膜炎(写真2)などがあります。
角膜浸潤や角膜潰瘍は重症な場合は失明につながる場合があります。
写真1 角膜潰瘍
写真2 巨大乳頭結膜炎
CL眼障害は、酸素不足やレンズによるコスレなどで角膜が傷つきやすくなり、レンズに付いた汚れや細菌、カビ、アメーバなどの微生物によって、まぶたのアレルギーや感染が生じるために起こります。それには、以下のような原因が考えられます。
- CLの長時間使用
- 定期検査をきちんと受けていない
- 不適切な洗浄・消毒
- 使用期限を超えた使用
- CL自体の汚れ、材質劣化、キズなど
なお、近視の目では、CLの度数が強いと近視が進みやすくなったり、目が疲れやすくなります。眼科での定期検査で目のトラブルや度数のチェックをしましょう。
CLを使用していて問題ないと思っていても、検査を受けると、CLの度数やカーブ、デザインが合っていなかったり、目にトラブルが生じていたり、CLにキズ・変形・変色があったり、汚れが付着していたりすることがあります。
このような異常は眼障害の原因になりますので、定期的に眼科専門医に、目の健康状態をチェックしてもらいましょう。検査の頻度は眼科専門医の指示に従ってください。
なお、眼科専門医の処方なしで、インターネットや通信販売などでCLを購入しないでください。
視力を補正しないおしゃれ用カラーCLは、平成21年11月4日から視力を補正する通常のCLと同様に、薬事法の規制を受けることになりました。販売店も許可を得た販売店でなければ販売できません。
視力を補正するしないにかかわらず、カラーソフトCLは色素が入っているため、目が酸素不足になりやすいので注意が必要です。
メイクは必ずレンズをつけてからにしてください。はずす時はレンズをはずしてからメイクを落としましょう。
メイクしてからレンズにふれると、手指についた化粧品がレンズに付いてしまいます。化粧品が目に入らないようにメイクしましょう。
最初に眼科でCLを処方された後、問題がないのでインターネットや通信販売で同じ度数のCLを買っている人が増えてきています。自分で問題ないと思っていても、検査を受けると眼障害やCLの不具合を生じていることがあります。
CLは必ず眼科で検査を受け、眼科専門医の処方を受けましょう。インターネットや通信販売でCLを購入するのは、次のような人が多いので注意しましょう!!
- 眼科専門医の処方を受けていない人
- 定期検査を受けていない人
- CLの添付文書を読まない人
- 眼科専門医に検査とCL処方を受けましょう。
- CLは目にとって異物です、正しく使用しても負担があります。
- CLの使用時間が長いほどトラブルが生じやすくなります。
- メガネを使用しましょう。家に帰ったら、また、勉強のときはメガネにするなど、CLとメガネを併用して目をいたわりましょう。
- レンズは早めに交換して、使用期限を守りましょう。
- 目に異常があったらレンズをはずしましょう。
- 定期検査を受けましょう。
- 適切なレンズケアをしましょう。
ハードコンタクトレンズのレンズケア
現在、ハードCLは、酸素を透す素材で作られています。酸素透過性の高いレンズほど汚れが付きやすいので、しっかり洗浄してください。ハードCLは洗浄のみで、消毒は必要ありません。
まず石鹸で手を洗い、手のひらにレンズをのせ、洗浄液をそそいで指の腹で約30回こすり洗いをしてください。レンズ内面の洗浄は小指で細かくこすってね。すすぎ液でよくすすいでからケースに保存してください。洗浄液は保存液と兼ねています。レンズをこすり洗いして保存をしないと、汚れがうつりケースが汚染します。
ケースは、毎日すすぎ液でよく洗い、フタを開けたまま自然乾燥させようね。ケースは約3ヵ月で新しい物に交換しましょう。
ソフトコンタクトレンズのレンズケア
2週間交換タイプ、1~6ヵ月使用する定期交換タイプ、約1年間使用する従来型タイプは、レンズケアで清潔にしましょう。
- 化学消毒法:
- 石鹸で手を洗ってレンズをはずし、手のひらにレンズをのせ洗浄液をそそいで約20回こすり洗いをして、消毒液でよくすすぎ、消毒液を入れたケースにレンズを入れます。ケア用品によって、消毒の時間が異なります。
- 煮沸消毒法:
- 石鹸で手を洗ってレンズをはずし、手のひらにレンズをのせ、レンズクリーナーで約20回こすり洗いして、よくすすぎ、ケースにレンズを入れます。煮沸器具でレンズとケースが消毒されます。
ケースは消毒液で毎日よく洗い、フタを開けたまま自然乾燥させようね。ケースは約3ヵ月で新しい物に交換しましょう。
レンズケア(ソフトCL)の基本
目からはずす |
レンズをはずす前に、必ず石けんで手をよく洗う | |
レンズの洗浄 |
手のひらにレンズをのせ、洗浄液をかけて、レンズの両面を指の先で、ゆっくりとこすり洗いする | |
レンズのすすぎ |
すすぎは必ず消毒液を使う。 水道水はダメです |
|
消毒・保存 |
レンズケースに消毒液を満たし、レンズを入れて、決められた時間おく | |
レンズをつける | レンズをつける前にも、必ず石けんで手をよく洗う |
ソフトコンタクトレンズの消毒法
CLの消毒は煮沸消毒法が最も有効ですが、従来型の約1年使用するタイプに向いています。他のタイプにも煮沸消毒ができるレンズがあるので、眼科専門医に相談してください。
化学消毒法は、過酸化水素が含まれた中和して使うタイプと、1剤で洗浄・すすぎ・消毒・保存できるマルチパーパスソリューションというタイプがあります。
目の状態やレンズの種類によって使えない消毒法があるので、眼科専門医に指示されたケア用品を、その説明書に従って使用してください。開封後1~2ヵ月で消毒効果が減少するので注意してね。
消毒液を水で薄めて使用すると効果がなくなるので、絶対にダメです。
こすり洗いやケースの洗浄が大切な理由
レンズの汚れや微生物により、まぶたのアレルギーや角膜の感染症が生じやすくなります。こすり洗いによりレンズについた汚れ(タンパク、脂質など)や細菌を取り、消毒効果が上がります。こすり洗いをしないと汚れや微生物が残ります。
不十分な洗浄により、レンズについた汚れはケースの中で細菌のえさとなり増えてしまい、レンズやケースが汚染されます。そのため、ケースの洗浄、乾燥で汚染を防ぎます。ケースは約3ヵ月で新しい物に交換しましょう。
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絵 清水 理江
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