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メガネのかしこい使い方

東京医科歯科大学名誉教授 所 敬

メガネは、屈折異常といわれている遠視、近視、乱視はもちろんのこと、老眼になっても使います。そこで人はだれでも、一生のうちで1度はメガネのお世話になります。
最近のメガネレンズは、高屈折率のガラスやプラスチックが使われて軽くなっています。また、メガネ枠も小さいものが流行して、メガネのファッションが多様化しています。しかしこうしたメガネは、上手に使わないと目が疲れたり、子どもでは根気がなくなったりします。そこで、メガネ選びは度数だけではなく、メガネ枠などにも注意しなければなりません。また、メガネとコンタクトレンズのどちらが良いかも問題になります。
このホームページでメガネのかしこい使い方を学びましょう。

目では、角膜と水晶体はカメラのレンズ系に、目の網膜はカメラのフィルムに、虹彩はカメラの絞りに相当します。また、水晶体の厚さを変えることによって、遠方と近方にすばやくピントを合わせることができ、カメラのオートフォーカスに相当します。しかし、通常、目は細かく動いていて、カメラブレの状態になっていますが、これは、脳で調整されてキチンと見えるようになっています。

目が遠くにピントを合わせた状態で、遠くのものがよく見える目を正視といいます。ピンボケに見える目を屈折異常といい、これには遠視、近視、乱視などがあります。
遠視は遠くのものが網膜の後ろでピントが合う目、近視は網膜の前にピントが合う目です。乱視は、目のレンズ系がフットボールのように縦と横のカーブが違う目で、遠くのものにも近くのものにもピントが合わない目です。屈折異常はメガネまたはコンタクトレンズで矯正します。

正視と屈折異常

遠くのものが網膜面にピントを結ぶようにするのが、屈折異常の矯正です。矯正には、主としてメガネとコンタクトレンズが用いられます。
遠視の場合には網膜の後ろにあるピントを網膜面にもってくるために凸レンズで、近視では網膜の前にあるピントを凹レンズで矯正します。乱視は縦と横で屈折力の違う乱視用のレンズ(円柱レンズ)を用います。このほか、最近では屈折矯正手術やオルソケラトロジー(角膜矯正療法)なども用いられています。

屈折異常眼の眼鏡矯正

小学校の教室の後ろの席では、視力が0.7以下ですと黒板の小さな字や薄い字が見えません。また、0.3以下ですと一番前の席でも見えません。そこで、適切なメガネをかけさせることが必要です。しかし、メガネの度が強すぎる(過矯正)と、子どもでは根気がなくなったり近視が進みやすくなるので、適切なメガネをかけるようにしましょう。メガネは授業中など必要なときに使用し、運動や家で勉強するときなどは、使用しなくても問題はありません。

仮性近視とは近視になりかけの目のことで、この状態ではメガネをかけません。メガネをかけると本当の近視になる可能性があります。
眼科専門医に、調節麻痺薬の点眼で仮性近視かどうかを診断してもらいます。そして仮性近視の場合には、調節麻痺薬を使って経過を見るのもよいでしょう。3ヵ月くらい使ってみて効果のある場合には、もう3ヵ月くらい使いますが、効果のない場合には真性の近視になっていますので、不自由な場合にはメガネを処方してもらいましょう。

角膜の成長は5歳くらいで完成するといわれています。しかし、コンタクトレンズの装用は、自分で取り外しができるようになってからにすべきでしょう。装用中に見えにくい、痛みがある、涙っぽいなどの異常な症状があったときに、自分で取り外しができないと重篤な障害を起こすことがあるからです。角膜に障害があっても、ソフトコンタクトレンズではそれほど痛みを感じませんので、注意が必要です。

目は、水晶体が厚くなったり薄くなったりして、ピント合わせをおこなっています。そこで、水晶体は弾性をもつことが大切です。しかし、加齢とともに水晶体の弾性が低下し、ピント合わせが困難になります。通常、45歳くらいで新聞や本などの近くのものが見にくくなります。
近視の人はその年頃になってもメガネを外すと近くが見えますが、キチンと合ったメガネをかけると、正視の人とほぼ同じ年齢で老眼の症状が出てきます。寿命は個人によって違いますが、老眼はだれでも必ずほぼ同年齢で起こってきます。

遠方視は毛様体筋が弛緩しています。近方視は毛様体筋が緊張しています。

原因が老眼のときには、老眼鏡をかけます。老眼に対する訓練もありますが、効果は一過性です。老眼の度は年齢とともに進みますが、60歳くらいでほぼ止まります。そこで老眼になってからは、一生のうちで3~4回くらい老眼鏡の度を変えることが必要になります。老眼鏡が凸レンズのときには、度が少し弱くなっても、目から離して鼻メガネで使うと近くが見やすくなります。
最近、手術で老眼を治すことも行われていますが、まだまだ研究段階のものです。

老眼(調整力の減退)

年齢を重ねるにつれ、調整力も減退します。

近視の人が老眼になった場合、近視のメガネの度を少し弱めにすると、遠方の視力はやや低下しますが、近くが見やすくなり、これで間に合うことがあります。また、継ぎ目のない遠近両用レンズである累進屈折力レンズもひとつの方法です。
近視でコンタクトレンズを使っている人は、調節が少なくてもよいメガネにかえるとよいことがあります。また、コンタクトレンズにも遠近両用レンズがあり、試してみるのもよいでしょう。

遠方と近方が見えるスタンダード型(遠近型)、遠方と中間距離の見えるゴルフ用(遠中型)、中間距離と近方が見える室内用(中近型)、近くのものが見やすいコンピュータ用(近近型)などがあります。
累進屈折力レンズはレンズの側面に収差が詰まっていますので、左右を見るときに違和感があるので、使用法に慣れが必要です。通常は、日頃メガネをかけている近視の人はこのレンズに慣れやすいのですが、正視や遠視の人は慣れにくいことが多いといわれています。

累進屈折力レンズの収差曲線

累進屈折力レンズは型によって収差曲線が異なります。

メガネは眼科専門医に目に合ったものを処方してもらいましよう。
メガネレンズには球面レンズと非球面レンズがあり、非球面レンズはユガミが少なくできています。また、材料にはガラスとプラスチックとがあります。どちらにも屈折率の高い高屈折率レンズがあって、レンズを薄くすることができます。また、中等度以上の近視では、昔とちがいレンズの重さが軽くなります。最近はプラスチックレンズでもコーティングがよくなり、傷つきにくくなりました。

眼鏡レンズの材質

 屈折率アッベ数比重
クラウン硝子1.52358.32.54
CR-391.49858.71.32
高屈折率レンズ
硝子1.83531.53.59
プラスチック1.74331.47

メガネはレンズの部分で見ればよく見えますが、枠から外れたところには焦点が合いません。そのため、小さいメガネ枠では見える範囲(視野)が狭くなります。また、累進屈折力レンズでは遠方から近方へと度が徐々に変わっていきますが(累進帯)、これが短いと違和感があります。
しかし、メガネ全体を軽くできる強度の近視では、小さい枠にするとレンズの周辺が厚くならずにすみますので見た目がよ<、強い度であることがわからないなどの利点もあります。

眼鏡フレームの垂直径

メガネから目までの距離は12ミリが基準です。この距離によって、目に対する矯正度数が変わってきます。近視のメガネを目に近づけて装用すると、近視度の強いメガネ(過矯正)になり、遠ざけると弱いメガネ(低矯正)になります。遠視ではこの逆になります。
過矯正は近視の進行につながりますし、疲れや根気がなくなるなどの原因になります。そこで、メガネは正しい位置にかけることが大切です。

頂点間距離

子どもは両目の間の距離が狭いので、成人用のメガネ枠ではレンズの中心がメガネ枠の中心からずれた所になってしまいます。そこで、子ども用のメガネ枠を使うようにしましょう。また、レンズと耳までの長さ(テンプル)も適切な枠を選ぶことが必要です。この長さが調整できるメガネ枠もあります。
メタルフレームの鼻パットはつぶれやすく、フィッテイングが悪くなる可能性が高いので注意しましょう。

コンタクトレンズは、眼科専門医に処方してもらいましょう。
コンタクトレンズにはハードとソフトがあります。ハードは角膜乱視があるときに有用です。また、角膜に障害が起きると目が痛くなりますので、ある意味では安全です。
最近はソフトレンズが主流になり、ディスポーザブル(1日使い捨て、1週間連続装用)のほか、頻回交換レンズ(2週間)、定期交換レンズ(1ヵ月、3ヵ月)、コンベンショナル(1~2年)などがあります。高い酸素透過性レンズが安全といわれ、近年、酸素透過率が高いシリコーンハイドロゲルレンズが発売されてきています。

コンタクトレンズの人でも、予備のメガネは必要です。

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絵 清水 理江

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