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緑内障ってどんな病気?
監修:日本緑内障学会理事長 相原一先生
見えているんですが…
「あなたの目には緑内障があります。」
ある日、あなたは、眼科でそう告げられるかもしれません。
「でも、なぜ?見えているのに。」
「私からすれば、視力に変わりはない。目の腫れもない。痛くもない。もともと近視なのでメガネは必要だ。でも、かければちゃんと見える。最近も眼鏡店で新しいメガネをあつらえた。こちらもよく見えている。だから大丈夫。今、見ることについて不自由は感じない。」
これは緑内障の初期にみる典型的な症状です。いや、「無症状」と言ってよいかもしれませんし、別の言い方をすれば「自覚に乏しい・自覚がほぼ無い」とも表現できるでしょう。
緑内障は、自分では気づかないうちに、ゆっくりと、視野が欠けていく目の病気です。視野とは、ある物を見ているときに、そこを中心とした視界の広がりのこと。緑内障には様々なタイプがあります。急に眼圧が上がって痛くなるタイプもあれば、他の目の病気から緑内障になることもあります。しかし、8割以上、つまりほとんどの緑内障では、自分では気づかないうちにその広がりがじわじわと狭くなるタイプです。そして視野の中心は、光に対する反応も良く保たれて、緑内障末期になるまで消えてしまうことはほぼありません。ほとんどの緑内障は末期になるまで、急に見えなくなることもないし、目が腫れることもなく、痛くもないのです。
「よく見えているから大丈夫。」と、ACジャパンのラジオCMと同じことを感じている方もいらっしゃるでしょう。そう、実際、視力検査の成績は優秀なはず。視力検査では、緑内障を見つけることができません。視力とは「見るための目のチカラ」、視野とは「視界の広がり」であり、同じモノサシでは比べられません。緑内障で侵されるのは、視野なのです。緑内障がかなり進行して視野が広く欠けていても、目の中にある大切な部分は、末期まで無事であることが多いとされています。つまり、その大切な部分を使って測る裸眼視力や矯正視力(適正なメガネやコンタクトレンズを利用しての視力)が悪くなることは、緑内障の末期までない、というわけです。
「近視だがメガネをかけたらよく見えている、眼鏡店で新調したメガネでも不自由はしていない。」でも、それは、視力のことを表しているだけなのです。
ACジャパンのテレビ広告では、「視野が欠ける」という、自分では気づきにくい状態を、たくさんの方に知ってもらうために、ジグソーパズルを用いて表現しました。緑内障の視野欠損は、ぼやけたり、霧がかかったように感じるだけで暗くはありません。そして、実際に視野の欠けた部分は、両目で見ることでお互いに補って気づかなかったり、また脳の働きが「あたかもそこになにかがあるように」補うため、ますます視野の欠け(視野欠損)には気づきにくくなります。
これは気づかない! 視野欠損の進み方
緑内障の視野欠損に気付きにくい理由を説明します。
1) 緑内障初期の視野欠損
緑内障初期の場合、ほとんどの方が視野欠損を自覚することはありません。下の画像は、緑内障初期の方が、右目と左目で片方ずつ見た時の見え方(視野)の一例です。
※赤で「固」と書いてある部分は、固視点(目を動かさないで見る位置)を表しています。 |
左右の写真を見て、それぞれどのあたりが見えていないのか、おわかりになりますでしょうか。それでは下の写真をご覧ください。
白い線で丸く囲った場所が、視野の欠けた部分です。初期の場合、完全に見えないわけではありません。気付いていないか、もしくは見ようとするものが何となく見づらい、かすむ、視野の一部がボーっとするといった症状となります。決して暗くはなりません。さらに、片目ずつ見た場合、どちらかの目にかすむ場所があったとしても、普段は両目を使っています。そのため下の写真のように、それぞれの目がお互いに補いあって、視野が欠けた部分に気付かないことがほとんどでしょう。
2) 緑内障中期以降の視野欠損
緑内障中期以降になると、徐々にかすみが強くなりますが、それでも緑内障ではないかと疑う方は、まだまだ多くはありません。以下の写真のように、片目(左眼の写真)の視野が極端に狭くなっていたとしても、もう片目(右眼の写真)の視野が保たれていれば、視野が狭いことに気づくことが遅くなります。
緑内障が進行しても、両目で見ていると気付かないことも珍しくありません。
視野欠損のイメージを、アニメーションで見てみましょう
特に、上の方の視野が欠けていた場合、ご高齢の方は、上まぶたが下がってきますので、気づきにくいということもあります。
まずは、片目ずつ隠して、視野を確認してみましょう。視野のセルフチェックはアイフレイル啓発公式サイト*1でもできます。
*1 視野のセルフチェックはこちら
どうやったら緑内障を早期発見できるの?
セルフチェックをしてみたら、なんだか見え方がおかしい、家族や知人が緑内障なので、ちょっと心配と感じた場合、以下の3つの方法で、緑内障の早期発見をおすすめします。
1. 眼底検査を含んだ各種健診を受けてみる
2. なんらかの症状で眼科を受診した時に、「緑内障は大丈夫?」と医師に聞いてみる
3. 「緑内障の疑いはなし」と言われた方も、その後も定期的なチェックを受ける
1. 眼底検査を含んだ各種健診を受けてみる
緑内障の診断にはいろいろな検査が必要です。緑内障の検査としてよく耳にするのが、眼圧検査です。ただ、日本人では眼圧が高くない緑内障患者が多く、眼圧だけで判断すると緑内障の見逃しが増えてしまいます。むしろ、早期発見のきっかけとしては眼底検査が大切です。人間ドック、事業所等による定期健康診断(定期健診)や、場合によっては自治体等の特定健診で、眼底検査が行われることもあり、眼底カメラで写真を撮影し、緑内障の疑いを判定することが多くなります。残念ながら、通常のすべての健診で眼底検査が行われるわけではありませんので、各種健診を受ける際には眼底検査も含まれた健診を受けることをおすすめします。
2. なんらかの症状で眼科を受診した時に、「緑内障は大丈夫?」と医師に聞いてみる
健診以外で緑内障を早期発見するコツがあります。「メガネやコンタクトレンズを作ろう」というときや、「目が赤くなった」、「メヤニが出る」、「目がかすむ」などの目の違和感があるときに眼科を受診し、「私は、緑内障は大丈夫ですか?」と聞いてみることです。薬局で売薬を買う、眼鏡店でメガネを作るなどで済ませてしまうと、眼疾患早期発見のチャンスを逃してしまうことも。眼科での診察の際に眼科医が視神経乳頭をチェック(眼底検査)し、緑内障の疑いがあるかどうかの簡易判定をします。視神経乳頭は瞳を開かなくてもチェック可能です。その結果により、医師の判断で通常の眼底写真や、視神経周囲の三次元撮影、視野検査などの専門的な検査を行います。
3. 「緑内障の疑いはなし」と言われた方も、その後も定期的なチェックを受ける
ほとんどの緑内障はゆっくりと進行しますので、過去の各種健診や眼科受診で緑内障の疑いを指摘されていなければ、頻繁なチェックは必要ありません。定期的に眼底検査を含んだ健診を受けることや、なにかの折に眼科を受診することが、緑内障の早期発見につながります。緑内障は40歳で20人に1人、70歳では10人に1人もいる病気*2 です。若いときは問題がなくても、年齢とともに緑内障になる人が増えます。緑内障ではないと判定された方でも、その後も定期的なチェックをおすすめします。
*2 「日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査(通称:多治見スタディ)」報告
緑内障になると、みんな失明してしまうの?
緑内障になってしまう方の数は多いのですが、失明してしまう人は多くありません。緑内障を早期に発見し、治療を始めることで視野欠損の進行が遅くなり、生涯困らない生活を送れる方が大半です。
失明という言葉は「真っ暗になってしまう」というイメージがありますが、ACジャパンの広告で表現されている「失明」は、緑内障のことをよく知らない視聴者でもわかりやすいように用いた言葉で、本来の正しい表現は「視覚障害」です。視覚障害には様々な程度があり、失明=視覚障害ではありません。
緑内障は、完全に治すことはできませんが、視野欠損の進行を遅らせることはできます。大切なものを見続けるために、定期的な目の健診で、緑内障を早期に発見し、きちんと治療を受けましょう。
緑内障について
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